焼きたてパン・コンフューズ

以前から、パン屋で「焼きたてパンの店」とか「おいしい焼きたてパン」とか書いてあるのがどうも気になっている。

焼きたてのパンの美味しさはとてもよく分かっているつもり。
私、パン教室に通っていたこともあるのです。
焼きたてのパンの味は、どうしたって焼きたてのときでなければ味わうことは出来ないし、あの馥郁とした香りはお腹のそこから「小麦ありがとう!」と叫びたくなるほどの芳醇さ。
割ってみれば湯気がふわんと立ち昇り、しっとりとした柔らかな舌触りは噛むのをためらうほど。
焼きたてのパンは高尚と言っても良いくらい、繊細で幸福な食べ物なのです。


通勤路に朝でも夕でも「おいしい焼きたてパン」と書いたのぼりが立っているパン屋があり、これを見るたび、「ええ、焼きたてパンはおいしいですよ」と思うのです。
焼きたてパンはおいしいですよ。

でもあなた、今陳列されているパンの何割が焼きたてでしょうねぇ。
本当に今焼きたてなのはどのパンを指すのでしょうかね。
メロンパンですか、それともフランスパン、それともジャムパン、それともカレーパン。
おっと、カレーパンならば揚げたてと言うべきですねぇ。
それともただ単に「焼きたてのパンっておいしいんだよね」という喜びを分かち合うためののぼりですよと言うつもりでしょうかしら。
はてさて。


とっても意地の悪い事ばかりを考えてしまい、なんだか自分の器の小ささに驚くばかりです。
けれどもね、パン屋さんならば、もっと真摯に焼きたてパンと向き合うべきだと思うのです。
むやみやたらと、焼きたてを振りかざしてはいけない、と思う。