雨と調和

今日の三重県は小粒の雨がざんざん降っていた。
もっと大粒で暴れるようにどさどさ降ってくれればよいものを、小粒の雨が勢いよく降るのはどうも負け犬の遠吠えのようで、小心者の強がりのようで、よろしくない。
好もしくない。
コピーをとりながら、なんとなくやさぐれた様な気持ちになって、今なら盗んだバイクで走り出せてしまうわよ*1と強気で思って、丸い緑の印刷ボタンを勢いよく押しもって、「嫌なことなんていくらでもあるんだから!」となんだかもっともらしい陰鬱なフレーズを心の中で放ってみたりもして、けれどおや、びっくり、嫌なことなんてひとつだってないのです。

マダムたちは相変わらず、私にとってもやさしくしてくだすっているし、仕事で分からないことは皆さんとても丁寧に教えてくださるし、誰一人として私に険しい顔を向けてきたりしないし、気温も快適だし、切ったばっかりの髪も美容師さんの手腕か*2湿気に耐えてきちんとおさまっている。
どこをどう探したって、嫌なことひとつ落ちていやしないのです。

これは困った。
この雨による、説明のつかない気持ちの行き場がなくなってしまった。
嫌なことひとつ無いのなら、こんな興の分からないような雨でも、よい気持ちのほうへこの感情を乗せてしまおう。
と、チェンジを図るべく、「あめふり」をハミング。


母さんがじゃのめでお迎えしてくれたら私、今だってうんとうれしい。
そういえば、小学生の頃お母さんに買ってもらった赤いチェックの傘がとてもお気に入りで、赤い長靴と、ランドセルの色も合って、すごく素敵、と思っていた。まあ、私ってばおしゃま。
なんだかどんどん楽しい気持ち。


鼻歌ひとつでこんなに気分の転向ができるなら、バイクを盗む必要なんてどこにも無かったじゃないの*3
世の中にある色んな不調和のうちのいくらかは、こんなふうにあっさり消化されていてもおかしくないんじゃないかしら、なんていうことをけっこう本気で思ってしまったそんな梅雨の日。

*1:悪い気持ちになるといつも思う。よく考えてみたら、私バイクの免許証持ってませんでした。と思ったけど、バイクをどうせ盗むなら無免許でも構わない。でも、これが犯行声明文のようになってはいけないし、やっぱり私バイクを盗むのはやめておきます。

*2:件のおしゃれな美容室はもうやめました。

*3:脳内ではとっくに手頃なバイクにまたがって職場の前をぶんぶん走ってる気になっていたので