犬畜生

犬が嫌いです。
ドラえもんを観て育った世代ですから、犬は猟奇的な走りをして尻に噛み付く生き物だとしっかりばっちり刷り込まれています。同世代のお友達に愛犬家がたくさんおりますけど、きっとドラえもんに縁が遠かったのだと思います*1
野犬に追いかけられたこともあるし、近所の犬に吼えられて溝に落ち、嵌ったまま泣いていた姉の姿も見ているし、保育所の近くの犬に吼えられてちびったこともそういえばある。
散歩中の犬がこちらに関心を寄せたりすると、飼い主が「こらこら、もう。うふふ。」なんて、私の恐怖心を完全に無視して呑気に構えるのもとても気に入らない。
犬に関して良い思い出なんて無いに等しい。

なのに、なのに。
私ってば今日、妹から届いたメールに添付された親戚の赤ん坊を見て、

「可愛い!仔犬みたい!」

と言ったのです。
あれだけ犬に対して嫌悪と恐怖を抱いて生きてきたのに、仔犬を可愛さの比喩に使うだなんて。
けれど振り返ると、「少年と犬」*2という話を読んだとき、そして「畜犬談」*3を読んだとき、私はいつも犬の味方でした。そしてとてもとても気に入って、すごくいいものを読んだ、とやや興奮交じりに思ったのです。
しかもどちらも短編集に収載さいれているにも関わらず、あの犬のやつが一番か二番目に良かったなーとさえ思ったのです。
もしかしたら、もしかしたら、私は犬が好きだったりするのかもしれない。


と、思いを犬好き思考へ廻らせてみたけれど、やっぱり犬に関して感じの良い所作はひとつだって思いつかない。
けれど、いつか犬を飼って、どうしようもなく愛しく思って、べたべたに可愛がるところは完全に想像できている。
むしろ、いつかそうなる、と確信すらある。

*1:現に、当時私の地元は所謂ところの一部地域でテレビ朝日は放送されていなくて、フジテレビ系列のアンテナ局で日曜日の朝にドラえもんが放送されていたのでした。

*2:

感じて。息づかいを。 (光文社文庫)

感じて。息づかいを。 (光文社文庫)

この中に収載。川上弘美さん選の短編集。「少年と犬」がとっても気に入ったので、この作者の実際の本でもう一度読みたいと探したけれど見つからなかった。残念。

*3:

きりぎりす (新潮文庫)

きりぎりす (新潮文庫)

この中に収載。どうかポチを三鷹のお家へつれてってやってくださいよ。と殆ど祈りながら読んだ。