優しい後輩とサーカスの記

名古屋に住む学生時代の後輩に誘われて、サーカスを見に行った水曜日。
合流直後のお昼時、「女子っぽいものが食べたい」と言った私を駅ビルレストラン街のスープストックへ連れてゆく抜群の判断力をみせる優しい後輩。
スープストックにてメニュー表のフレンチカレーを指して、どうフレンチなのかお店の人に訊いてみてほしいとはにかみながら彼女に頼むと、快諾、そしてはきはきと店員さんに訊いてくれる。
昼食後、久しぶりの高層ビルにはしゃぎ、エレベーターの中でフリーフォール的な興奮を求めて窓際にへばりつく私をよそに入り口付近でボタン番をしながら見ず知らずの他人の為に「開」ボタンを押しているのは私の優しい後輩。
落ちる落ちるとひとりぬるい興奮を味わって、地上に着いたときにようやく彼女の所在を知りました。

サーカスの会場へ向かう道中、「もしかしてサーカス嫌いなんじゃないかと思って心配だったんです」とここでも繊細な気遣い。嬉しい。
「だって動物がかわいそうでしょ。そういうの嫌いかな、と思って」と。
まあ、動物にまで優しい後輩。

けれども動物がいないサーカスなんて全然だめ。
そんなに地に足が着いて、真っ当になってしまったらサーカスの魅力が半減してしまう。
どこか不道徳で後ろ暗いところがいいのだもの。
テントの布一枚向こうにはいつも通りに街が健全にあって、こちらではライオンがトラがキリンが珍妙な芸当をしているこのシュールったらシュール。

サーカスをたっぷり楽しんだあと、ケーキを食べながら前髪を伸ばすの伸ばさないのの話やらをして、少しお洋服を見たら、お別れ。
あっという間の楽しい時間でした。
またきっと名古屋に行こう。近いんだし。と心に誓うも出不精でお家をこよなく愛しているので次はいつになるだろう。
でも行く。
彼女に会いたいもの。


どうでもいいことですけれど、隣に座っていた赤子を連れた母親が、ピエロさん、おにいさん、キリンさん、ライオンさん、挙句動物さん、とみだりにさん付けをしていることがすごく気になった。
いつか母親になっても毅然と、キリン、ライオンと言えるようにしておこう。