23歳の日

結論から言うと失敗しました。
カルテは2枚セットになっていて、上の一枚が個人情報、つまり生年月日やらお住まいやら。下の一枚が髪の毛に関して、を書く仕組みになっていたわけです。
西暦を書く欄に躊躇して、けれどアシスタントの女の子を待たせるわけにもいかなので、西暦のみを後回しにして、呼吸が整ったところで、えいやと「1987」を書き付けようと思ったのです。
ところが二枚目に差し掛かったのを見るやいなやアシスタントの彼女が「こちら失礼しまーす」と、一枚目の用紙を持っていってしまったのですね。
あらまあこれ、どうしましょうねぇ。
と、思えど取り返すわけにもいかず動揺を隠して、残りのカルテをちまちまと書いてゆく。すると一番下に「何か知っておいて欲しいことがあれば書いてね」とアピールする大きな四角。
「23歳です」と書こうかと迷ったけれど、ここに書いたらもう、嘘ですけどね、と言っているも同然。
結局、今日の私は年齢不詳のままです。

カルテを持ってこられるまでの間、ここで下働く人たちは私と同じ年のころ。特にあのアシスタントのお嬢さんはまさに同級生、と自己暗示をかけながら23歳になるべく心の準備をしていたのに、無念。