葛藤それは大人の証

マダム*1の一人にデップのアリスに関して感想を求められた。
彼女の手元にはデップアリス関連の資料がたくさんあって、その期待値の高さにはらはらしてしまった。
彼女のわくわく感を大切にしつつ、けれど嘘もつきたくない。
私はそのマダムがとても好きで、好きすぎてお話しするときに脇に小汗を感じてしまう程なので出来る限り彼女の笑顔を曇らせることなく、それでいて正直に自分の感想を述べたかった。
マダムの笑顔と私の本音のちょうど真ん中にぴたりとはまる手頃な言葉を必死に紡ぎ出す。


悪い頭で一生懸命考える視線の先に、きらきらしたマダムの笑顔。
お待たせしたくない、と思うあまり脇の小汗が元気に滲み出る。


アメリカってすごいなって感じです」


お待たせしたのにこの有様。
マダムはまさかの発言にきらきらした笑顔を保ったまま、パーマヘアの上にはクエスチョンマークが瞬いていました。


「テクノロジーがその、えっと、映像がきれいでえっと……」

と取り繕う私にマダムは手元の資料を指しながら優しく同調してくだすった。
泣きそうなくらい嬉しかった。