シズラー!


最寄のスーパーで大好物の金物市が開催されてました。
鼻息荒くじょうごやら、トングやら、もんじゃ焼きのヘラやらを物色していて見つけてしまいました。

シズラー。

遡ること十余年前。
まだ、私が小学生の頃、家族で食卓を囲む団欒の刻に訪問者がありました。
台所の暖簾の隙間から覗き見ると、見るからにみすぼらしい、まるで浮浪者と思しき中年の男性。
玄関扉の向こう側にリヤカーのようなものが見えました。

迎え出た母に、その男は
「明日から子どもが学校に行くのにお金がありません。なにかひとつでいいのです。買ってくれませんでしょうか」
と、恐縮しながら伝えます。
そこで母が300円で買ったのがこのシズラー。
確か、その男が「値段はいくらでも構いません」と言ったように記憶しています。
母が台所に戻ってきたときに手にしていたシズラーはすごく汚くて、埃まみれで劣化したビニルの向こうで能天気な笑みを浮かべるこの女性がなんだか不気味に思えました。

因みに、母がシズラーで瓶の栓を開けたり、ビールの泡を抑えたりしているのを見た記憶はありません。
あのシズラーは何処へ行ったんだろう。