煙草ジェラシー

本当は今頃、煙草をすぱすぱふかす女の人になっているはずだった。
子どもの頃から煙草の臭いが大好きで、
「ハタチになったらきっと煙草を吸うんだ」
とずっと思っていた。
それに、本来煙草は女性の為にあるべきだ、とも思う。

けれど、今現在の私はどちらかというと嫌煙家なのでして、煙草を吸う事もなければ、煙草の臭いの付いた洋服は執拗にリセッシュを吹き付けている。洋服が湿って「もういいってば」と言っているような気がしても気にしない。吹き付ける。

煙草を吸おうとした経緯が無いわけじゃない、けどその辺は長くなるので割愛。


でもやっぱり煙草自体は好き。
煙が嫌いになっても煙草は好き。
煙草を吸う女の人も好き。


煙草を吸っている女の人を見ると子どもの頃の羨望が眼を覚ます。
自分のこれと決めた嗜好品を愛し続けるってすごく格好いい。
それをポケットに忍ばせて、「私はこれだから」みたいな雰囲気で大切にできたら素敵なのに。
でもこれって、ポケットにクロレラ、とか、ポケットにニンニク卵黄とかでは興ざめなのであって、やっぱり煙草だからいい。
なんか、こう、「引き換え」感がいいのかな。
人魚姫みたいじゃない。
不足を補う為にあって、それでいて体と引き換え。
切ないじゃない。浅はかで馬鹿げていて、すごく女っぽい。


でも吸わない。
自分の鼻先に舞う煙を想像する、だけ。
それだって悪くない。